— GROWTH · 自分を育てる本棚 —

何のために勉強するんだろう

— 第2部:衝撃 / やっぱり勉強したくなってきた ―

What Is Study For — Part 2

In a word

意味は、探すものじゃなくて、つくるもの。
そして成功するために必要なのは、方法ではなく行動だ。

はじめに ── 答えは出ただろうか

第1部の最後に、一つだけ問いを残した。

君は勉強という道具を使って、自分の何を鍛えたい?

答えが出た人も、まだの人もいると思う。どちらでもいい。ここで止まる必要はないから、そのまま読み進めてほしい。

第1部は「勉強とは何か」の話だった。勉強は道具の一つで、良いも悪いもなく、使い方と目的で意味が変わる。心が育つから結果がついてくる。そういう話をした。

第2部は、その先の話をする。道具の正体が分かっても、握らなければ何も起きない。今回は「では、どう動くか」を三つに分けて考えたい。自分の意味をどうつくるか。何が困難を可能にするのか。そして、なぜ多くの人は分かっていても動けないのか。

正直に言うと、この三つは大人にもそのまま突き刺さる。書きながら、自分のことを何度も思い出した。

1. 意味は、あとから生まれる

机の上に、まだ形になっていない粘土のかたまりがあるとする。この粘土に、意味はあるだろうか。

今のままなら、ただの土だ。何の役にも立っていない。でも、こねて焼けば茶碗になる。形を変えれば花瓶にも、器にも、皿にもなる。誰かの食卓で毎日使われるものになる。

では、その意味はどこから来たんだろう。粘土そのものに、はじめから茶碗の意味が入っていたわけじゃない。形を変えたから、意味が生まれた。

意味は、はじめから持っているものじゃない。あとから生まれるものだ。

これは物の話だけじゃないと思っている。

2. 磨く前に、答えは出ない

「自分は何のためにいるんだろう」と考えたことはあるだろうか。

この問いは、若いときほど答えが出ない。当たり前だと思う。まだ形になっていない粘土に、用途は見えないからだ。

そして多くの人が、ここで止まってしまう。何の役に立つのか分からない。自分が何者なのかも分からない。考えても答えが出ないから、考えるのをやめる。そして磨くのもやめてしまう。磨くのをやめれば、当然いつまでも答えは出ない。

順番が逆なんだ。答えが出たから磨きはじめるんじゃなくて、磨いているうちに答えが見えてくる。少し形が変わって、何かができるようになって、誰かに「ありがとう」と言われて、そこではじめて「自分はこれの役に立てるのかもしれない」と思える。

だから、分からないまま磨きはじめていい。分からないことは、始めない理由にはならない。

3. 生きる意味は、自分でつくれる

生まれながらに意味を背負っている人はいない。誰も、生まれた瞬間に「君はこのためにいる」と渡されたりしない。だから探しても、どこにも落ちていない。

意味は、探すものじゃなくて、つくるものだ。

自分を磨いた分だけ、できることが増える。できることが増えた分だけ、誰かの役に立てるようになる。

そして「自分はこの役に立っている」と思えることが、人生に意味を与える。逆に言えば、どれだけ恵まれていても、その感覚がないと人はしんどくなる。大人になると、これがよく分かる。

君が今やっている勉強は、その形を変えていく作業だ。まだ何になるかは分からなくていい。粘土のままでは分からないというだけの話だから。

自分が生きる意味は、自分でつくっていける。これが第一の話だ。

4. 困難を可能にするのは、意志の力

ここから二つ目の話に移る。

一年後にフルマラソンを完走する、と決めたとする。何が必要だろう。

体力。いいシューズ。コーチ。走る時間。才能。どれもあったほうがいい。でも、正直なところ、なくてもなんとかなる。体力は走るうちにつくし、シューズは安いものでも走れる。コーチがいなくても完走している人はいくらでもいる。

ところが、これがなければ絶対に無理、というものが一つだけある。

「絶対にやる」と決めた意志だ。

これさえあれば、体力は後からつくし、分からないことは人に聞ける。人は、本気の人には手を貸してくれる。逆にこれがなければ、シューズもコーチも時間もあるのに、三日でやめる。

勉強もまったく同じだ。参考書も、塾も、時間も、あったほうがいい。でも決定的なのはそこじゃない。

5. 「できたらいいな」には、力がない

ここで一つ、区別しておきたいことがある。

「英語が話せたらいいな」と思っている人は、たくさんいる。日本中に何百万人といるはずだ。でも、思っているだけの人は、たぶん一生話せないままだ。

願うのと決めるのは、似ているようで全然違う。

「話せたらいいな」には、何の力もない。「話せるようになる」と決めたとき、はじめて力になる。

「いいな」は、うまくいかなくても何も失わない。だから何も変わらない。「なる」と決めた瞬間から、どうやってそこに行くかを考えはじめる。時間の使い方が変わる。断るものが出てくる。

君の中にも、たぶん「できたらいいな」がいくつかあると思う。そのうちの一つでいいから、「なる」に変えてみてほしい。

6. 目標に、立派な理由はいらない

目標を口にすると、こう聞かれることがある。「それに何の意味があるの」

この質問は、けっこう人を止める。うまく答えられないと、目標そのものが安っぽく思えてしまうからだ。

でも、答えられなくていい。立派な動機なんて必要ない。「あの学校に行きたい」だけで十分だ。「なんとなくかっこいいから」でもいい。将来なりたいものが決まっていなくてもいい。

なぜなら、大事なのは目標の立派さじゃないからだ。

そこに向かう途中で、自分が磨かれることのほうが大事なんだ。

目標に向かって進んでいるあいだ、君は意志を使い続けている。うまくいかない日も机に向かう。遊びの誘いを一度断る。その一つひとつが、意志を鍛えている。

だから目標は、自分を磨くための口実だと思っていい。口実が立派である必要はない。

7. 意志は、今この瞬間から使える

ここまで読んで、こう思ったかもしれない。「でも自分は意志が弱いから」

それも、たぶん思い込みだ。意志の強い人と弱い人が、最初から別々にいるわけじゃない。生まれつき意志を持って生まれてくる人もいない。

意志は、持って生まれるものじゃなくて、使うものだ。

筋肉と同じで、使えば強くなるし、使わなければ弱いままだ。「自分は意志が弱い」と言っている人は、たいてい弱いんじゃなくて、まだ使っていないだけだと思う。

しかも、今この瞬間から使える。準備も道具もいらない。毎日、自分に言い聞かせるだけでいい。恥ずかしければ声に出さなくていい。「絶対にやる」と自分に言う。それだけで、少しずつ変わってくる。

8. 一日二十四時間は、全員に平等

ここから三つ目の話に入る。分かっているのに動けない、という問題についてだ。

この世に生きるすべての人に、平等に与えられているものが一つある。時間だ。一日は二十四時間。これだけは、誰にとっても同じだ。

お金は平等じゃない。生まれた環境も、得意なことも平等じゃない。でも時間だけは同じだけ配られている。だから差がつくとしたら、それを何に使ったかの違いでしかない。

昨日の一日を思い出してほしい。寝る。食べる。風呂に入る。学校に行く。スマホを見る。ゲームをする。勉強する。だいたいそんなところだろうか。

そのとき、君は無意識に、それぞれを二つのどちらかに振り分けていたはずだ。

9. 「やらなきゃ」の正体

二つというのは、これだ。

ゲームは前者だろう。食べるのも寝るのも前者だ。おなかが空くから食べるし、眠いから寝る。誰にも言われていない。歯をみがくのはどうだろう。やらないと気持ち悪いから、もう考えずにやっているかもしれない。

では、勉強は。たぶん多くの人にとって、これは後者だ。ここで大事なのは、その分かれ目が何でできているかだ。

やりたいことは、喜びや楽しさを感じること。やりたくないことは、不安や退屈や苦痛を感じること。

つまり、内容で決まっているわけじゃない。感じ方で決まっている。

同じ「走る」でも、部活で走らされるのは苦痛で、友達と遊びで走るのは楽しい。同じことをしていても、感じ方が違えば別の箱に入る。

だとしたら、感じ方が変われば、入る場所も変わるということだ。

10. 不安で動くと、いつか燃え尽きる

ここで、少し先の話をしたい。

多くの大人は、一日の大半を「やらなきゃ」で過ごしている。決まった時間に起きて、決まった電車に乗って、気の進まない仕事をして帰ってくる。

その原動力は何かというと、たいてい将来への不安だ。休んだら収入が減る。遅刻したら信用を失う。ここでやめたら家族が困る。だから動く。動けているのだから、うまくいっているように見えるかもしれない。

でも、この動き方には期限がある。

不安に追い立てられて動く人生は、いつか燃え尽きる。

追われて走り続けることはできない。人は、逃げるためだけに一生は走れないんだ。

実は、これと同じことが受験でも起こる。「今やらないと将来まずい」という不安で勉強を始めた人は、入試という壁を越えた瞬間に、走る理由を失う。だから合格した途端に「もう勉強しなくていい」となる。あれだけ勉強したのに、二度と本を開かなくなる人がいるのは、そういう構造だからだ。

君にはそうなってほしくない。だから「やらなきゃ」を「やりたい」に変える方法の話をしたい。

11. 想像の力と、その限界

そのために使えるものが一つある。想像力だ。

試してみてほしい。今、梅干しを一つ手に取って、口に入れるところを想像してほしい。皮を噛んだ瞬間に、酸っぱさが口いっぱいに広がる。

どうだろう。何も食べていないのに、口の中がすっぱくなったんじゃないだろうか。

これは、けっこうすごいことだ。頭の中で思い浮かべただけなのに、身体が本当に反応している。想像は、頭の中だけのものじゃない。

想像は、身体を動かす。

だから、想像には力がある。ここまでは本当だ。ただし、ここで止まると危ない。

想像しただけで満足してしまう人がいる。頭の中では合格していて、頭の中では英語が話せていて、頭の中では理想の自分になっている。気持ちがいいから、そこで止まってしまう。

でも、想像だけでは、クエン酸もミネラルも摂取されない。唾液は出た。身体は反応した。それでも、栄養は一グラムも入っていない。実際に口に入れなければ、何も手に入らないんだ。

想像は、動きはじめるためのスイッチであって、結果そのものじゃない。

12. 必要なのは、方法ではなく行動

では、スイッチをどう入れるか。

合格したあとの一日を、細かく想像してほしい。ぼんやりした将来じゃなくて、映像になるまで細かくだ。

何時に起きるだろう。何を着て家を出るだろう。どんな道を通って、どんな建物に入るだろう。授業のあと、誰と何をしているだろう。夜、どんな部屋に帰るだろう。

そこまで描けると、同じ勉強がまったく違って見えてくる。今日の一時間が、その一日につながっている実感が出るからだ。そうなったとき、勉強は「やりたいこと」の箱に移る。

もっといいのは、実際に見に行くことだ。行きたい学校まで足を運んでみる。写真を撮って、部屋に貼っておく。想像を、より鮮明にしておく。

そのうえで、最後に一番大事なことを言う。

痩せる方法を知らない人は、たぶんいない。食べる量を減らして、体を動かす。これだけだ。誰でも知っている。それでも痩せない人がたくさんいるのは、方法を知らないからじゃない。

成功するために必要なのは、方法ではなく行動だ。

勉強も同じだ。もっといい勉強法があるはずだと探しているうちは、まだ何も始まっていない。今ある教材を開いて、一問解いたほうが早い。

想像して、決めて、動く。この三つが揃ってはじめて、何かが変わる。

学びのポイント

— QUESTION —

君への問い

ここまで読んでくれてありがとう。第2部の宿題は、二つある。どちらも今日中でいい。

一つめ ── 君は、いつから始める?

大きな決意じゃなくていい。今日、何を一つやるかだけ決めてほしい。小さいほどいい。「単語を十個」でも「数学を一問」でもいい。決めたら、書いて、今日中にやる。それだけだ。

二つめ ── 合格したあとの、理想の一日

朝起きてから夜寝るまでを、映像になるまで細かく書いてほしい。何を着ているか、どんな道を通っているか、誰といるか。書いたものは、見えるところに貼っておくといい。

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From father

この第2部を書きながら、父さんが一番刺さったのは「方法ではなく行動」のところでした。
いい方法を探している時間は、動いていないのに動いた気になれる。とても居心地がいい。
父さんもずっとそこにいた時期があります。
だから偉そうなことは言えないけれど、一つだけ。
今日、何か一つ決めて、今日のうちにやってみてください。小さいほどいい。
それが、いちばん短い近道です。

参考文献:喜多川泰『手紙屋 蛍雪篇』ディスカヴァー・トゥエンティワン

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