— FORTUNE · 運と人生の本棚 —

運は、使う・貯めるもの

Spend or Save

In a word

運は「いい/悪い」で語るものではない。「使う」か「貯める」かで語るもの。
「運がいいあの人」は、見えないところでコツコツ運を貯めてきた人。

はじめに ── 父は「運を貯める」とは無縁の人間だった

正直に書くと、かつての父さんは「運を貯める」なんて発想とはまるで無縁の人間でした。そのくせ、いつも心のどこかで「何かいいことが起きないかな」と期待ばかりしていた。そして当然のように、いいことなんてほとんど起きませんでした。

今ならその理由がはっきり分かります。当時の父さんの頭の中は、たった一つの単純な構図でできていたからです。

いいことが起きる = 運がいい = ラッキー

運をもらうこと、受け取ることばかり考えて、貯めることをまったく考えていなかった。残高ゼロのポイントカードを握りしめて、「何かもらえないかな」と待っているようなものでした。

おまけに父さんは、笑顔も苦手でした。いつも考え事をしているような難しい顔をしている——でも実際には、大して何も考えていない。ただ不機嫌そうな顔が、父さんのデフォルトだったのです。これは後で触れますが、「運のアンテナ」を自分で折りにいくような状態でした。

核心 ── 「運」は良し悪しではなく〈使う・貯める〉もの

そんな父さんの構図を、根っこからひっくり返してくれた考え方に出会いました。それが、この一言です。

運は「いい/悪い」で語るものではない。「使う」か「貯める」かで語るもの。

世間では「運がいい人/悪い人」がいると思われがちですが、そうではありません。運が貯まっている人と、使ってしまった(貯めていない)人がいるだけ。だから「いいことばかり起こる人」と「悪いことばかり起こる人」がいるように見える、というわけです。

かつての父さんは、完全に後者でした。貯めていないのに、いいことだけを期待していた。それで起きないと「なんで自分ばっかり」と不満を言う。当たり前の結果だったのです。

「運」=「ポイントカード」で考える

この考え方は、身近なポイントカードに置き換えると、とても分かりやすくなります。

買い物をするとポイントが貯まる。これが「いい行いをして運を貯める」にあたります。地味だけれど、確実に積み上がっていく。貯まったポイントを使えば、割引や商品と交換できる——これが「運を使う」、つまりラッキーな出来事です。

ポイントには、後から貯まるという性質もあります。「何もしてないのにいいことが起きた」ように見える人ほど、実は過去にコツコツ貯めていた。逆に、貯めていないのに期待ばかりしても、残高は増えません。まさに昔の父さんです。

大事な性質は二つ。

「後払い」── 先に貯めて、あとで使う

これは、「運は後払い」という言葉でも言いかえられます。ポイントを貯めずに、ごほうびはもらえない。「何もしてないのに、何かもらえないかな」なんて、誰も期待しませんよね。それなのに運になると、貯めてもいないのに、いいことだけを期待してしまう。順番が、逆なのです。

「ツイてる」と見える人は、貯めた運を使っているだけ。

だから、周りから「あの人はツイてる」と見える人は、特別な何かが降ってきているわけではありません。過去にコツコツ貯めた運を、いま使っているだけ。順番は、いつも「貯める → 使う」なのです。

そして、ここがいちばん大事なところ。頑張っても報われないときは、運が悪いのではなく、運が貯まっている時期だと考えられます。報われない"今"は、後で使うための運を、せっせと貯めている最中。そう思えると、つらい時期の見え方が、少し変わってきます。

報われない"今"は、運を"貯めている"時期。

運の「アンテナ」は、上機嫌のときに感度が最大になる

運が大きく変わる瞬間というのが、人生にはあります。それを掴めるアンテナは、みんなが持っています。そしてこのアンテナは、上機嫌のときに感度が最大になる。逆に不機嫌だと、まったく働かない。最高の運気がすぐ近くまで来ていても気づけず、そのまま逃げていってしまうのです。

ここで、さきほどの「難しい顔」が効いてきます。いつも不機嫌そうな顔をしていた父さんは、たとえ運が貯まっていたとしても、それを受け取るアンテナを自分で鈍らせていた。勝手に悲劇のヒーローを演じて、近くまで来ていた運を、何度も逃がしていたのだと思います。

運の貯め方と「そ・わ・か」

では、どうやって運を貯めるのか。基本はシンプルで、世間で「いい行い」と言われていることをすること。その中でも、お金も時間もかからず効率よく貯まるのが「そ・わ・か」——「掃除・笑い・感謝」です。きれいごとで終わらせたくないので、父さん自身がやり続けて「これは効く」と実感したことを書きます。

そ ── 掃除:人がやりたがらないことを、率先して

「運を貯める」と考えたとき、まず最低限やっておきたいのが、自分の部屋くらいは整理整頓しておくこと。足元が散らかったまま運の話をしても、説得力がありません。貯める前に、まず器を整える。これがスタートラインです。

そのうえでおすすめしたいのが、トイレ掃除。多くの人が口をそろえて勧めることでもあり、父さんも実際に続けてきました。トイレや排水溝のような、できれば誰もやりたがらない場所こそ意味があります。

ここで父さんがよく思い出すのが、パレートの法則(2:8の法則)です。世の中の大事な成果は、一部の「2」に集中する、という考え方。人がやりたがらないことを率先して引き受ける人は、それだけで希少な存在になる。だから任され、信頼され、結果としてチャンスがその人のところに集まってくる。人が避けることを進んでやる人は、「2」の側に選ばれやすくなる——父さんはそう捉えています。

わ ── 笑い:チャンスの「間口」を広げる

笑門来福とは、まさにこのことだと思います。少し理屈っぽく言うと——世の中の考え・モノ・チャンスは、基本的に人伝てでやってきます。ある日突然目が覚めたら何か閃いていた、なんてことはほぼ稀。良いものは、たいてい「誰か」が運んできてくれるのです。

だとすれば、答えはシンプル。

怒り顔の人と、ニコニコしている人。あなたはどちらに話しかけたいですか。

それだけで、チャンスが入ってくる「間口」の広さがまるで変わります。笑顔は、運のアンテナの感度を上げるだけでなく、運の通り道そのものを広げてくれるのです。

か ── 感謝:「当たり前」を「ありがとう」に変える

感謝は、最も手軽で、最も効く「いい行い」です。

以前『いただきます』でも書いたことですが——自分の努力ではないのに手に入っている恩恵の陰には、必ず誰かの命懸けの努力がある。食べ物も、便利さも、今の自分を支えてくれているものは、ほとんどが誰かの働きの上に成り立っています。それを「してくれて当たり前」と受け取るか、「ありがとうございます」と言葉にできるか。この差は、とても大きい。「ありがとう」の効果は、本当に絶大です。

父さんは、神社参拝とお墓参りに定期的に行きます。そこでお願いごとを並べるのではなく、いつも伝えているのは二つ。「今日もこうして参拝に来られたことへの感謝」と、「いつも守り、助け、導いてくれていることへの感謝」です。

そして、その根っこにあるのが、父さんがいちばん大切にしている感覚——

必要なことは、必要なタイミングで経験できるように用意されている。

良いことも、一見つらいことも、ちょうど必要なときにやってくる。そう思えるようになると、起きる出来事すべてに感謝が向けられ、自然と上機嫌でいられるのです。

掃除と感謝で運を「貯め」、笑いで受け取る「アンテナ」と「間口」を広げる。そわかは、この三つがきれいに噛み合った循環になっています。

なぜ行動を変えると運が変わるのか ── 「思考と運命の連鎖サイクル」

ここまでが「何をすればいいか」の話でした。でも、父さんがいちばん大切にしているのは、その奥にある「なぜそれで人生まで変わるのか」という仕組みです。マザー・テレサの言葉として知られる、こんな連鎖があります。

  1. 思考 → 最初に抱いた、心の中の考え
  2. 言葉 → その思考が口に出され、言葉になる
  3. 行動 → その言葉が、行動に移される
  4. 習慣 → 行動が繰り返され、習慣になる
  5. 人格 → 習慣が根づき、その人の人格が形づくられる
  6. 運命 → その人格が、人生の運命を決める

ポイントカードの話が「運をどう扱うか」だとすれば、この連鎖は「なぜそれで人生が変わるのか」を説明してくれるエンジンです。掃除も感謝も笑顔も、一回やっただけでは何も変わりません。でも、思考が言葉になり、言葉が行動になり、行動が習慣をつくる——そうして、最後は運命にまで届く。すべての入り口は、いつも最初の「思考」にあります。

いちばんの問題は、「思考」を変えない人が多すぎること

心理カウンセラーとして、父さんはたくさんの人の話を聞いてきました。そこで強く感じることがあります。

圧倒的に、「思考」を変えない人が多い。

多くの人は、今よりもっと良くなりたいと願っています。収入を上げたい。成績を上げたい。モテたい。現状に満足していない。それ自体は向上心の表れで、悪いことではありません。問題はその先です。「変わりたい」と感じているのに、何も変えない。

「今までこうだったから」「こうするのが普通です」。そう言って、いちばん根底にある「思考」を、頑として変えない。だから、行動も習慣も人格も運命も変わらない。それなのに「こんなに頑張っているのに不公平だ」「自分ばかりツイてない」と不満が出てくる。父さんはこれを、連鎖サイクルの「逆回転」と呼んでいます。

そして——かく言う父さん自身が、まさにその一人でした。今なら思います。今の自分は、昨日までの自分の「思考」の結果なのだと。あの頃の結果は、あの頃の父さんにふさわしい、適切な結果だったのです。

何を変えるか変えないかは、その人の自由です。ただ、今のまま何も変えずに望み通りの未来になっているのなら、もうとっくにそうなっているはず。そうなっていないのなら、答えはシンプルです。

始め方 ── いきなり全部は変えなくていい

とはいえ、「思考を変えろ」と言われても、いきなりガラッと全部を変える必要はありません。むしろ、それは続きません。初めは少しずつ、無理のない程度に変えてみる。きっかけは何でもいい。他の人がやっている良い行い、誰かから聞いた話、本で読んだ内容——どれでも構いません。

どれも、その場でできる小さなことです。

父さん自身も、人から神社参拝を勧められました。それまでは初詣で年に一回行くかどうか。でも「試しにやってみよう」と思考を少しだけ変え、実際に足を運んで行動を変え、それをずっと続けました。すると、だんだん現実のほうが変わっていったのです。連鎖サイクルが、ようやく正しい方向に回り始めた瞬間でした。

学びのポイント

今日からできること

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From father

きみへ。
父さんは、運を貯めてこなかった時期に、ずいぶん遠回りをしました。
ポイントカードを握りしめて「何かもらえないかな」と待っているような、そんな日々を、本当に長く過ごしてしまった。
だからきみには、少し早めにこの話を残しておきたい。
今日できる小さな一つでいい。掃除でも、笑顔でも、ありがとうでも。
それが「明日のきみ」を、少しずつ変えていきます。
今の自分は、昨日までの思考の結果。
明日の自分は、今日からの思考で変えられる。

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